便チェックの重要性

厳しい暑さが続くこの季節は、熱中症に注意が必要です。しかし、この季節には体が水分不足になったり、暑さによる食欲低下で「便秘」も起こりやすくなります。便秘症状や硬い便が続くと、肛門に負担がかかり、痔も悪化しやすくなります。

日々の排便習慣や便の状態をチェックして、体調管理に役立てることをおすすめします。また、何か異常や不安を感じたら、肛門科や消化器科へご相談ください。

こんな便には要注意!

便を作る過程では胆汁色素のステルコビリンが生成されます。これにより便は茶色となります。そのため、茶色の便は良いですが、次の色の便には注意が必要です。

黒色の便

黒色の便の場合は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の可能性があります。胃や十二指腸から出血があると、赤血球のヘモグロビンが酸化され、便が黒くなります。

赤色の便

便が赤い場合は、大腸からの出血かもしれません。大腸は、胃や十二指腸のように強い酸が出ないため、血が変色せず、赤い色の便になって排出されます。大腸の炎症、大腸ポリープ、大腸がん、痔などが考えられます。

白色の便

子どもの白色の便では、ロタウイルスなどによるウイルス性胃腸炎が考えられます。また、コレラにかかっても白くなります。便が白くて身体に黄疸が現れると、膵臓がんや胆管がんも考えられます。

毎日便のセルフチェックをしよう!

実は、便いわゆる「うんち」を見分ける指標には、世界的な基準「ブリストル便形状スケール」というものがあります。

この基準は、色や形に基づいて便の状態を分類しています。そして、口から肛門までの消化管を通過した時間、特に大腸の通過時間を判断するために作られたものとなります。

この基準を使用すると、便の形状を客観的に評価できます。セルフチェックできるため、自身の健康チェックにも役立ちます。

ブリストル便形状スケール

ブリストル便形状スケール

1や2の硬い便は、大腸の通過時間が遅く、便に含まれる水分が少なくなります。逆に軟らかい便は大腸の通過時間が早く、水分を多く含んだ便となります。

ブリストル便形状スケールの上記表において便の状態が1や2であれば便秘、6や7であれば下痢と判断されます。

健康管理、肛門に負担をかけず痔を予防するには、3~5の硬さに便を整えてから出す習慣を心がけることが大切です。

良い便をつくるために!

3~5の硬さの便をつくるためには、腸内環境を整えること、適度な運動、ストレスをためないことなど、さまざまあげられます。夏場は特に、水分補給に注意していただくことおすすめします。

夏は特に水分コントロールが大事!

日常で飲む水分は、そのまま便の水分量にはなりません。実際、1リットルの水を飲んでも、900mlは小腸で吸収され、大腸に到達するのは約100mlです。

体内の水分が不足すると、腸からの水分吸収が増え、便から水分が奪われて固くなります。硬い便は腸内をスムーズに移動しにくく、便秘の原因になります。逆に、水分が多すぎると下痢のような水状の便になります。良い便を作るには水分コントロールが欠かせません。

体内の水分は尿や便、汗として排出されたり、呼吸や皮膚からも蒸発する「不感蒸泄」があります。そのため、安静にしていても一日約2.5リットルが失われると言われています。運動をしたり暑い環境下ではさらに多くの水分補給が必要となります。

体内に取り入れる水分には、飲料水、食べ物に含まれる水分、栄養素がエネルギーに変わるときに生成される代謝水があります。1日に失われる水分量を考えると、飲料水として1.5〜2リットルほど摂取するのが良いと考えられます。体内の水分バランスを保ち、健康を維持しましょう。

便に異常を感じたら早めに相談を!

毎日、便をチェックしていることで、便の良し悪しが自分なりに分かってくると思います。ブリストル便形状スケールを使ってセルフチェックして、自分の便の状態は悪いかな、毎日とちょっとが違うなと感じたときは、お気軽に消化器科や肛門科へご相談いただければと思います。また、便秘や下痢が続くときは、お早めにご相談ください。

お腹が痛い、血便が出るなどといった、大きな異常や症状が出る前に相談いただくことで、痔の悪化、大腸などの病気に早く気づいて対応ができます。こういった毎日の心がけや、早めの行動が、皆様の健康維持へとつながります。ぜひ、ご自身の健康管理に毎日の便チェックも取り入れてみたください。