皆さまが生活をする中で「現代人は食物繊維の摂取量が不足している」「便秘予防には食物繊維が大事」といったフレーズを、たくさん耳にされていることと思います。そこで今回は、そもそも食物繊維とは何かと、その重要性などについて少し説明したいと思います。
そもそも食物繊維にはどんなもの?
食物繊維は、たんぱく質・脂質・炭水化物などと同じように、食品の栄養成分表示などで見られる項目の1つです。定義は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」とされています(厚生労働省e-ヘルスネット)。
たんぱく質・脂質・炭水化物などは、消化管の中で消化酵素によって分解されて、小腸から体の中に吸収されていきます。しかし、食物繊維はこの消化酵素の作用を受けずに小腸を通過して、大腸まで達する成分となります。食物繊維の働きは、便の体積を増やす材料となるとともに、大腸内の環境を改善する腸内細菌に利用され、これらの菌を増やすことが明らかとなっています。
つまり食物繊維は、小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達する食品成分として、便秘の予防をはじめとする整腸効果が期待できます。また、その他にも血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が分かっており、積極的な摂取が推奨されています。食物繊維は、体に絶対的に必要な栄養素ではありませんが、上記で説明した通り体の健康に深く関わる成分です。
食物繊維の十分な摂取が難しい理由
食物繊維の一日あたりの摂取目標量は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています(厚生労働省/日本人の食事摂取基準2020年版)。食物繊維は、魚介類や肉類などの動物性食品にはほとんど含まれず、植物性食品に多く含まれます。穀類(玄米・胚芽米・麦めし・とうもろこし)、豆類(煮豆、納豆、おから)、きのこ類、野菜類などに多く含まれます。
また、食物繊維は種類によって働きが異なりますので、さまざまな食品を組み合わせて、バランスよく摂取することも大切となってきます。好きなものを中心に食事をしているとどうしても不足してしまいがちです。食物繊維については、意識して摂取する必要がある成分と考えています。
痔・大腸がんの予防のためにも食物繊維の摂取を
別のページでもご説明しておりますが、痔のそもそもの原因は、生活習慣にあります。腸内環境を整え、便秘を予防できると、痔の予防につながります。また、大腸がんのリスク要因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられています。
この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大していて、生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)が関与していると考えられています(日本医師会/大腸がんの原因)。食物繊維の摂取を心がけて、健康づくりに取組んでもらえたらと思っております。